膝の痛みについて
膝の痛みについて
膝の痛みは早めに受診ください
膝の痛みの原因は様々ですが、ほとんどの場合、軟骨を守る「半月板の損傷」から痛みが生じます。半月板を損傷しているのを我慢すると、半月板がすり減って小さくなったり、軟骨同士が直接ぶつかりすり減ったりすることで、骨を守るクッションの役割を果たすことができなくなったりします。
さらに症状が進行した場合、大腿骨とけい骨の骨同士がぶつかるようになり、その結果、レントゲンでは見えない小さな骨折が無数に生じてしまい、痛みが徐々に増していきます。この症状は、しばらく安静にしていると痛みは治まってきますが、痛みの原因の根本的な改善を行っていないため、痛みが何度もぶり返します。改善を行わないことで、だんだんとその間隔が徐々に短くなっていき、最終的には慢性的に膝の痛みを抱えるようになります。その他にも、潰れてでっぱった骨が膝の動きの邪魔をして、膝の曲げ伸ばしも難しくなっていきます。
「年のせいだから」と勝手に決めつけて、あきらめるのではなく、早めに専門医へ受診することをおすすめ致します。また、膝の状態にあった最適な治療法の選択するのはもちろんのこと、早期発見によって、リハビリを中心とした保存治療で症状の改善ができ、手術を行う場合も、身体への負担が少ない治療を行うことも可能となります。
当院では患者さんにとって、最適な治療法の提案を致します。
X線上問題ない状態/ 軽症な状態 |
保存療法やリハビリ、関節鏡治療にて機能回復をはかります。 【保存治療について】 |
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骨切り術(HTO) | 軽度の変形性膝関節症や内反膝変形(O脚)に適応されます。 【HTOについて】 |
部分人工関節置換術(UKA) | 全置換術に比べ、外の関節半月、靱帯を温存できるため負担が少なくなります。 【人工関節について】 |
全人工関節置換術(TKA) | 傷んで変形した関節の表面を取り除き人工関節に取り替えます。 【人工関節について】 |
当院では、できる限り保存療法をメインで行い、生活指導、理学療法(リハビリテーション、以下リハビリ)、装具療法、薬物療法などの保存治療を組み合わせて行います。 保存療法で症状が完全に改善されるのが1番良いですが、痛みが残っているのに保存的治療を続けると膝の破壊が進み、何度も痛みが再発し、再発までの期間が短くなってくる場合があります。 約3か月~半年間にわたって保存療法を行っても膝の痛みの病状が改善されない場合は、手術療法を検討するのも良い選択です。 限界まで我慢をし、歩行ができなくなる状態になってから最終手段である人工関節置換術の手術治療を受けると、膝周囲の筋力低下が進行してしまい、手術後のリハビリが長期化し、筋力が戻り切らない場合もあります。 まだ自分自身の膝を温存できる段階で身体に負担の少ない手術を検討することも可能です。 ご自身では、なかなか判断がつきづらいことあるかと思いますので、お悩みを抱えている方がいらっしゃいましたら、お気軽にご相談ください。
※鎮痛薬は年々進歩してきており、痛みを強力に抑えることができる薬や痛みを異常に感じやすくなっている脳を正常化する薬、漢方などを組み合わせて痛みに対して真剣に向き合います。薬が処方された場合、薬を内服していただいていることを前提で治療を進めます。もし、理由があって薬を中断してしまった場合は気兼ねなくおっしゃってください。
膝関節に関節鏡と呼ばれる管状のカメラで関節内部を見ながら、痛みの原因になっている部分の治療を行います。1㎝以下の傷でできる手術で、体の負担が少ない手術です。
関節の周囲に2~3箇所の7mm程度の小さな穴を開けて生理食塩水で満たし、関節鏡と治療器具を挿入し半月板や軟骨などの損傷部位の修復や再建を行います。
手術の傷跡も小さく、良い組織を壊すことなく、早期に社会復帰が可能です。
関節の変形や損傷がそれほどひどくない場合に行います。
高位脛骨骨切り術HTOとは、脛骨をくさび状に切ることによりO脚を矯正し、膝の外側に荷重を移動させる手術です。
患者さんの膝関節が温存されますので、スポーツ(ラグビーやサッカー格闘技も可能です)や農業などの重労働をされている方も、復帰が期待できる術式です。
変形性膝関節症の症状が中程度までで、まだまだ運動や肉体を使う仕事を続けたいなど、年齢を問わず活動性が高い患者さんは検討することをおすすめします。
現在一般に使用されている人工膝関節の耐用年数は20年程度と想定されております。そのため再手術を避けるために65歳よりも若い患者さんには、この「高位脛骨骨切り術:HTO手術」を検討します。
O脚は、長年膝の内側の膝関節に偏った過重なストレスがかかることにより発症し、O脚になるとさらに膝の内側ストレスが強まり、半月板、軟骨、軟骨下骨が壊れ、小さな骨折が生じ、骨が腐ることさえあります。
・人工関節置換術と比較すると侵襲が少ない手術です。
・自分の関節を温存または再生する手術です。 ・手術後の日常生活に対する制限が不要です。 ・術後のスポーツ(ラグビー、サッカー、格闘技も可)や力仕事が可能となり、正座も可能になるケースが多く見られます。
創部が可能な限り目立たないように丁寧に縫合します。
人工膝関節置換術とは、変形性膝関節症により壊れてボロボロになった関節を10mmぐらいうすく切り、取り除いて、人工関節に置き換える手術です。 同時に乱れた脚の形(O脚・X脚)を改善させます。 保存療法で膝痛が改善せず、骨切り術では改善効果の見込みが期待しにくい場合に最終的に人工関節手術適応を検討します。 具体的には、下記のような症状がでた場合に検討します。
人工膝関節は、関節の滑らかな動きを再現できるように、大腿骨部と脛骨部の本体は「金属製」、脛骨部の上面(場合によって膝蓋骨の表面も)は耐久性に優れた「ポリエチレン」でできており、これらが軟骨の代わりとなり、膝の動きを再現します。 最近の技術革新の結果、「ポリエチレン」の質が向上し、人工関節の寿命が従来より延びてきており、以前より若い年齢で人工関節を行っても入れ直しの手術の心配が必要なくなる可能性が高くなっています。
リハビリを頑張れば正座できる方もいらっしゃいます。 (手術の進歩で人工関節後も膝の曲がりが良くなってきています。)
術後の傷が可能な限り目立たないように、心を込めて縫います。
前十字靭帯は、膝の中心にある靭帯で大腿骨と脛骨をつないでいる靱帯をいいます。膝の安定性に重要な役割を果たしており、大腿骨に対して脛骨が前に移動しすぎないように支えています。また、膝のひねりなどに対して、動きすぎないよう支える役割も果たしています。
前十字靭帯損傷は、スポーツを行っている際によく起こります。例えば、相手との衝突など接触プレーで膝関節に対して、強いひねりの力が加わり生じます。ジャンプ後の着地動作、動作中の急な切り返し動作など、相手との接触がなくても起こります。断裂後は靭帯が損傷することで、出血し腫れることが多く、膝の痛みや膝の曲げ伸ばしが行いにくくなる症状が出ます。
前十字靭帯損傷後は、急性期を過ぎると痛みや腫れが減り、日常生活は支障なくできるようになるため、様子を見られる方が多くいらっしゃいます。 しかし、膝は非常に緻密な動きをしている関節で、症状がなくなったからといって放置すると、膝が本人の気づかない異常な動きをし、膝を支えるサポートをする半月板に負担がかかり、後に半月板に損傷が発生したり、関節内に水が溜まりやすくなった場合は軟骨が徐々に傷んだりします。 文献上、10年で50~63%に関節の変形が見られると報告されています。 また、靱帯が切れ不安定な状態でスポーツなどを行うと、知恵の輪が外れるように膝が外れるような、膝崩れるという現象が生じるケースが多くみられます。 そのため、損傷時には早期に専門医のいる医療機関にて診察を行い、必要な場合はMRIによって靱帯の状態の確認し、適切な診断を行い、現状を適切に把握することがとても大切です。 10代で前十字靭帯損傷を受傷し、放置した場合、20代後半~30代から変形性膝関節症を来す可能性があります。 前十字靭帯損傷を見逃さず、適切に治療することで患者さんの膝を守って行くことが我々の使命だと思っています。
左陳旧性ACL不全+変形性膝関節症(OA)
前十字靱帯は完全に切れてしまった場合には自然修復することはないといわれています。
そのため、治療は手術による靱帯を作り直す、関節鏡視下前十字靭帯靱帯再建術が必要になります。
前十字靭帯再建術とは、自分の組織(膝屈筋腱、膝蓋筋腱、大腿直筋など)を採取し、関節鏡を用いて膝の中を確認しながら、前十字靭帯の代わりとして移植する方法です。
手術の傷は、関節鏡を入れるための穴を数ヶ所と腱を取る際の数cmの1ヶ所必要となります。半月板損傷があれば同時に手術が可能です。
関節内靭帯が正常に機能をしないと、不安定膝となり、
放置をすると”変形性膝関節症“になります。
前十字靱帯再建術の治療において、手術と同等かそれ以上にリハビリが重要です。 日常生活やスポーツ競技に復帰するためには、患者自身の積極的な協力が必要となります。
当院では、術後だけでなく、損傷後から術前までも筋力を落とさないように、炎症を管理し、適切なリハビリテーションを継続して行っていきます。 手術翌日から松葉杖や装具を使用し、適切なリハビリテーションを開始していきます。 入院は平均3週間程度となります。 入院中:日常生活に戻るために膝の動きの調整や歩く練習をしていきます。 退院後:通院しながら膝の動く範囲を拡大し、筋力のトレーニングを行い機能改善していきます。 手術後3~4ヶ月でランニング開始し、6ヶ月以降はスポーツ復帰に向けたトレーニングを開始していきます。接触のないプレーで怪我をしていた場合には、再度同じ怪我を繰り返さないために、筋力の向上や怪我しやすい癖の修正が必要になります。 専門の理学療法士がフォームチェックを行いながら、運動復帰に向けた運動を進めていきます。膝の状態の経過を確認しながら、術後おおよそ8ヶ月くらいでスポーツ完全復帰を目指していきます。